異分野交流の勧め(会長挨拶、23年9月)

 暑さ寒さも彼岸までと言いますが、爽やかな秋の季節となりました。
 9月21日台風15号が関東地方を直撃しました。その前後、紀伊半島、中部地方、東北地方を通過しましたが、会員の皆様にはご無事のこととお祈り申し上げます。
 先日たまたま、本棚を整理していましたらバックミンスター・フラーの本を目にしました。
 フラーはアメリカのユニークな建築家で世界的に知られた方です。フラードーム、プレファブ建築等で知られています。正規の建築教育は受ける機会は無く、海軍時代に多くの機械技術を学び、独学で建築技術者になった方です。その技術は世界に影響を与えました。
フラードームと称して様々なドームの技術提案をしました。その中でサッカーボール状の64面体のドーム状の物体は、今は赤ちゃんの玩具として売られております。恐らく、多くの方が目にしていると思います。
 12、3年前、ライス大学化学学部のカーリー教授等は炭素原子C60の構造を発見、フラーレン構造と名付け、ノーベル賞を受賞しました。カーリー教授がどういういきさつでフラードームを知ったかわかりませんが、C60の硬い物質性状から、その構造がフラードームのようになっているのではないかと仮説を立て、様々な方法で立証し、その成果が世界に認められました。
 建築を生業にしているものとして、化学者がフラードームについて知識を持ち、化学構造と建築構造を結びつけたことに驚きました。日頃、異分野のことにも注意を払っていることと思います。異分野の方方ともお付き合いをしていることと思います。もし、フラードームのことを知らなければ、こうした世界的発見はあり得なかったと思います。
改めて異分野交流の大切さを認識しました。
 話変わり、フラー氏のオリジナルスケッチを見にフラー氏の後継者に会いに行ったことがあります。ニューヨーク市クイーンズ区にイサム・ノグチ美術館があります。その館長がショウジ・サダオ氏です。日系人です。氏はかつてフラー氏の下で仕事をしておりました。その関係でフラー氏のスケッチを大切に保管しております。新聞紙大の大きさの紙に見慣れたドームの設計図を見ました。

技術士稲門会会長 原田敬美
1972年建築学科卒業、1974年修士修了、技術士(建設)、博士(工学)、一級建築士

管理者 について

当会会員/幹事 技術士(情報工学)
カテゴリー: 会長から パーマリンク